【特別寄稿】凋落する匿名クラブ 復活のカギは会長にあり

匿名クラブの停滞・凋落が止まらない。

団体の中核を担う「匿名クラブコアブランド」のホームページは今年7月以降更新されていない。企画に至っては3月の「アンチ・バレンタイン」発刊以来一度も行われていない。

一昨年頃から、いわゆるツイッタラー団体の失速が懸念されていた。事実、多くの団体が活動休止や解散へと至っている。

そこに風穴を開けたのが匿名クラブであると、筆者はみている。樋茂国明・現理事長が2014年に会長となって以降、同団体は著しい発展をみた。

「ブランドチーム」制度を導入し、生き残ったツイッタラー団体の大同団結を実現して日本最大の団体を誕生させたのを皮切りに、LINE団体を合併するなどして複数のSNSにその名を轟かせ、遂には新聞やテレビにて特集が組まれるほどになった。樋茂理事長はまさに匿名ネット界の「尊師」と呼ばれるに相応しい男であろう。

ところが、いま匿名クラブには当時の勢いは全くない。樋茂国明氏は今年三月に会長を退き、後任に腹心の樋茂佑吾氏を据えた。

その後、6月に大規模な組織再編を行うなどのテコ入れは図られたものの、かつての活気は完全に失せてしまっている。一部では、後任の人選が国明氏の唯一の失敗だとさえ囁かれているようだ。

だが、彼らのどちらも責めるべきではない。

3月時点において、確かに佑吾氏は最も活躍した役員の一人だった。国明氏が彼を選任したのは、いわば当然であったのではないか。

そして、会長就任後の佑吾氏にも活躍できない理由があった。

理事長は、佑吾氏の活動名を国明氏のそれを引き継いだ「ひもてぃー」とし、Twitterアカウントも継承させることで、従来の役員・会員関係を維持させ、円滑に業務を遂行できるよう工夫した。

しかし、それは残念なことに裏目に出てしまった。佑吾氏はもともと「すろにあ」という名前(余談だが、この名前も国明氏の命名による)で活動していた。それにも関わらず、国明氏は「ひもてぃー」の名を、いわば押し付ける形となってしまった。

このために佑吾氏がモチベーションを失ってしまったという事は想像に難くない。国明氏から会長の任期を一年と限定されていたのもこれに拍車をかけたであろう。

さらにもう一つ。国明氏は受験対策の為にこの一年間一線を退いているが、彼を引き継いだ佑吾氏もまた受験生である。活動が低調になっているのも無理のない話だ。

だが、佑吾氏はまもなく受験を終えるとされている。時間的制約は大きく取り払われるだろう。また、国明氏は来年以降も佑吾氏に「ひもてぃー」を任せたいと述べている。これが実現すれば、今度こそ佑吾氏と「ひもてぃー」が一体化することになる。

佑吾氏はかつて、「自分が『ひもてぃー』であるという自覚はない」といった趣旨のツイートをしていた。今後この意識が除かれ、再び活気が戻ることを、筆者は外野の身ながら期待しているのである。

先に述べたように、匿名クラブは今年6月に組織再編を行った。ここで注目すべきは、組織にセクショナリズム的傾向が強まっている事だ。

国明氏が会長を務めていた頃は、多くの権限が会長に集中していたが、同時に職務の多くもまた彼に集中していた。受験生である佑吾氏に出来るだけ負担がかからないよう工夫がなされていたのかもしれない。

結局のところ、そうはならなかったようだ。各部署ごとに責任者が置かれてはいるが、彼らは十分にリーダーシップを発揮できず、国明氏、佑吾氏の多忙も相まって活動は停滞してしまった。

だが、この構造こそが匿名クラブ再起のカギであると筆者は考えている。

この団体は、会長の持つ力が非常に強いように思われる。匿名クラブ中興の祖である国明氏も会長就任前は「幹部」職だったというが、もしも幹部職のままであったならこれ程の大変革を起こせなかったはずだ。匿名クラブにおいて、「会長」ポストは単なる団体代表者に留まらない多大なる力を秘めた職であろう。

前述の通り、佑吾氏をめぐる環境は改善しつつある。既に国明氏肝いりの企画である「反バレンタインノベルズコンテスト」が今年度も開催されることが明らかにされた。活動に積極的な構えを見せる会員も、僅かながら増えているようだ。

匿名クラブの理念を見る度に、筆者は「一番つらかった時に、ここに出会えていたなら」と、無性に悔しくなる。匿名クラブの名前と理念が広まることで、何人もの青少年がここに救いを見いだせるだろう。

佑吾氏の会長就任から、はや半年が経過した。残り半年の任期の中で、佑吾氏は匿名クラブを再興させることが出来るのか。佑吾氏の真の実力が問われる。

--文:匿名希望