きょう9月15日、旧立憲民主党(14日解散)と旧国民民主党(11日解散)の議員らが合流する新党「立憲民主党」と旧国民の合流反対派による新党「国民民主党」がそれぞれ誕生する。
新立憲民主党の国会議員は149名で、政権交代前の民主党立憲民主党の結党により、2017年に民進党が事実上分裂して以降最大となる一大野党勢力が誕生することになる。
だが、そもそも民進党の分裂は、小池百合子・東京都知事率いる「希望の党」が突如として誕生、民進党が「合流」を決断したことに端を発する。
民進党と合流し衆院選に打って出るも、旧民進党の政策に反する「安保法制容認」「憲法改正賛成」などの公約を打ち出し、党内では「排除の論理」を公然と掲げたことなどにより、希望の党は民進支持層からの支持を失い、野党共闘は壊滅した。
〈参考記事:衆院選:「共産党しかない」ネットで広まる若者の声〉
希望の党による「排除」を受けた枝野幸男氏が設立した立憲民主党(旧)は急速に注目と人気を集め衆院選で躍進、一方の希望の党は公示前勢力を割り込む敗北を喫した。
2017年の衆院選に激震を走らせ、敗北後は潮が引くように消滅していった「希望の党」とは何だったのか、一本の記事でまとめ上げることはできないが、立候補時に同党を選び、敗北した候補者を取り上げることで、この党のありように迫りたい。
引退、復活、地方鞍替え・・・
「希望の党」を語る上で、まず外せない落選議員がいる。
自民党所属の衆議院議員でありながら東京都知事選で小池百合子候補を応援、のちに離党し政治団体「国民ファーストの会」設立に動き、小池の国政再進出に道筋をつけた若狭勝だ。
政権を見据え、候補者育成のための政治塾「輝照塾」をつくり、希望の党の立ち上げメンバーになるも、直後の衆院選で敗北。比例復活もならず、落選となった。
若狭は落選後に政界引退を表明し、しばらくはコメンテーターとしても活動していた。現在は弁護士としての活動が中心となっている。
政治家には弁護士や官僚など法務経験を積んだ人が多い。若狭と同様、落選後に政治活動をしながら弁護士などの士業で生活するケースは希望の党落選組にも多くみられる。
一方で、落選しながらも復活当選を果たした議員もわずかながら存在する。
衆院選敗北後、旧希望落選組でつくる政治団体「一丸の会」を立ち上げた馬淵澄夫元国土交通相がそれだ。2019年2月、旧希望の党比例近畿ブロックで当選していた樽床伸二衆院議員(当時)の辞職に伴い繰り上げ当選した。
当選後は山本太郎に接近し、「消費税減税研究会」を共同で設立し、山本の選挙では応援に入っている。今年に入り旧国民民主党に所属し、合流新党の立憲民主党に参加する。
共産系政治団体に「勘違いで」公認要請
そのほか、地方自治体の首長選挙に出馬する落選者もいる。楠田大蔵・福岡県太宰府市長や、埼玉県所沢市長選で落選した並木正芳氏、長野県上田市長選で落選した寺島義幸氏などがいる。
なかには、ある首長選への立候補を模索しつつも、最終的に出馬を断念したケースもある。その一人である希望の党の元衆議院議員について、日本共産党関係者から驚きの証言があった。なんと出馬にあたり、共産党系の政治団体に公認・協力を水面下で打診していたというのだ。
首長選挙では普通、「地域のことは地域で決めるべき」という考え方のもと、政党は前面に出ず、政党色の強い候補であっても公認は出さずに推薦にとどめることがほとんどである。
そこで組織力が頼りの共産党では、党の地区組織と地域の民主団体(共産党と連帯・協力する労働・婦人・商工団体などの市民団体)の共同で市民団体をつくり、そうした「市民の会」を確認団体として戦うことが全国的に行われている。
「市民の会」が擁立する候補は共産党員であることが多いが、もちろん例外もある。たとえば今年2月の京都市長選挙で共産党系「市民本位の民主市政をつくる会」などで構成する確認団体「つなぐ京都2020」が擁立した福山和人氏は共産党籍を持っていない。
とはいえ、他党の国会議員であった政治家を擁立するケースはない。前述の元議員も、「市民の会」担当者から説明を受けると支援要請を取り下げた。
「〇〇さん(元議員)は『市民の会』を共産党系だと気づいていなかった。超党派の団体だと勘違いしていたみたい」(共産党関係者)
「市民と野党の共闘」の旗印である護憲、安保法制廃止の政策を反故にし、野党共闘を大幅に後退させた「希望の党」。その元候補者が一時的にとはいえ共産党に接近したとなれば、本人が衆院選で訴えた政策はいったい何なのか。本人に全く政策の軸がない事になる。いずれにせよ、落選してしかるべき候補者である。
野党再編の完成により、旧民主党系の人間の多くは新しい立憲民主党のもとに集うことになる。現職だけでなく浪人中の落選者もおそらく同様だろう。
立憲民主党はこれまでの民主党系諸政党とは異なる価値観を打ち出した、新しい政党である。そこに加わろうとする者のこれまでの遍歴がどのようなものか、立憲民主党の顔にふさわしいものか、有権者はじっくり監視していく必要がある。